太陽光発電を無料設置できるのはなぜ!?仕組み・メリット・デメリットを解説

2021年9月15日

経済産業省や国土交通省などは2030年までに新築戸建て住宅の約6割に太陽光発電設備を設置する目標を設ける検討を開始しています。現時点での割合は新築戸建ての2割以下であるため、これにより、家庭での脱炭素化がかなり進むと考えられています。

ただし、ただでさえ新築戸建て住宅を購入するのにお金がかかるのに、太陽光発電まで設置すると、建築費用は一般的に+100~200万円にかかります。これにより、太陽光発電導入をためらう方も多いと思います。

ただ、太陽光発電を導入しない場合は、今後も増大していく再エネ賦課金により、各ご家庭の家計を圧迫していく恐れがあります。再エネ賦課金とは太陽光などの再生可能エネルギーの買い取りに要した費用を電気の使用者から集める制度であり、太陽光や風力が普及していけば、その負担は年々増大しています。再エネ賦課金の詳細は資源エネルギー庁HPを参照下さい。

以下にその再エネ賦課金の計算例を記載します。

【計算例:4人家族で1カ月の電力使用量を400kWhとします】

・2012年の再エネ賦課金単価 0.22円/kWh × 400kWh = 88円

1か月あたり88円程度なら、別に気にならないレベルですよね。次は2021年で計算します。

・2021年の再エネ賦課金単価 3.36円/kWh × 400kWh = 1,344円

(再エネ賦課金単価は東京電力ホールディングス「再生可能エネルギー発電促進賦課金単価」より引用)

なんと、上記計算例では2021年の負担額は2012年の約15倍になっています!!これは驚きですよね。いかに再エネが増えてきているかが分かります。再エネ賦課金は太陽光などの再生可能エネルギー設置者へ還元されていますが、設置していない方は設置者へ再エネ料金を支払いしているような形になります。よって、「設置しないと損をしている」と思われる方もいるかもしれません。

以上のことから、「太陽光発電を導入したいが初期費用がネックだ」「費用をかけずに再エネ賦課金を減らすことは出来ないのか」と思われる方がいると思います。そんな方におすすめなのが、今回ご紹介する初期費用無料の太陽光発電になります。

なぜ設置するのに100~200万円かかるのに初期費用が無料なのか?詐欺なのか?と思いたくなりますが、本当に無料で設置が可能です。今回の記事を最後まで読んで頂ければ、きっと理解頂けると思います。

今回の記事では、初期費用無料の太陽光発電の仕組み、種類およびそれぞれのメリット・デメリットについて詳しく説明していきます。

それではどうぞ!!

なぜ太陽光発電を無料で設置できるのか?

太陽光発電を無料で設置できるサービスはいくつかありますが、こちらを紹介する前に、各サービスの共通点である「無料で設置できる理由」について、簡単に説明します。

この太陽光発電の無料設置は、太陽光パネルを設置できる場所(住宅の屋根やカーポートなど)を太陽光発電の設置業者に貸し出すということになります。

この場合、 設置した太陽光パネルおよび発電した電気は設置業者の所有物であり、設置業者は売電により利益を得ます。また、設置・保守費用は全て設置業者負担となります。つまり、家主は太陽光を発電できる場所を提供するだけです。これにより、初期費用無料で太陽光パネルを設置出来るということです。

設置業者がなぜ、一般住宅の場所を使用してまで、太陽光発電をしたいのか?と疑問に思いますが、当然、設置・保守費用を上回る利益が見込めるためこのようなサービスを提供しています。

サービスには大きく分けて3種類あり、「PPA(電力販売)」と「屋根貸し」、「リース」になります。

それでは、それぞれの仕組みやメリット・デメリットについて見ていきましょう。

PPA(電力販売)の仕組み

「PPA」とは、住宅所有者の屋根などにPPA事業者が太陽光発電システムを無償設置し、住宅で発電された電力をこの住宅所有者へ有償提供する仕組みになります。

具体的には住宅所有者は太陽光で発電された電気を使用し、その対価として、サービス料金(=使用した分の電気使用量で変動)をPPA事業者へ支払うことになります。仮に太陽光発電で足りない場合は既存の契約している電力会社より供給されます。

契約期間はPPA事業者により異なりますが、10年以上が目安となります。PPA事業者のメリットとしては、10年以上の契約をすることで、投資回収が可能および長期に渡り顧客を維持できるといったことがあります。

それでは、「PPA」を採用した際の住宅所有者のメリット・デメリットを確認しましょう。

【メリット】

・初期費用無しで太陽光発電システムを導入可能

・太陽光発電システムの保守費用もPPA事業者負担

・再エネ賦課金が減るため、電気料金が安くなることがある

・停電時でも、日中は太陽光発電が発電している電気を使用可能

契約期間終了後は太陽光発電システムをPPA事業者から無償譲渡される

【デメリット】

・10年以上の長期契約になるため、今後より良い制度が出てきても変更不可

・PPA事業者が定める電気料金によっては割高となることがある

・太陽光発電設備を無償譲渡された後は保守・撤去費用は住宅所有者負担

「PPA」を採用する最大のメリットは電気料金が安くなる可能性があることです。これはPPA事業者が定める電気料金によりますが、太陽光発電した電気には再エネ賦課金がかからないため、現状よりも電気料金を安くなることがあります。PPA事業者へ問い合わせし、一度シミュレーションしてみると良いでしょう。

また、FIT期間の10年が終わる頃にはPPA契約も終了するため、サービス料金が不要となります。太陽光発電システムは住宅所有者へ無償譲渡され、自家消費だけでなく、余剰電力の売電ができるようになることはメリットになります。ただ、売電価格はFITが終了により、大きく下がるため、利益はそれほど多くならないと想定されます。

最後に考慮しておくべき事項として、太陽光発電システム無償譲渡後(設置から10年以降)の機器の保守費用と撤去費用になります。設置から10年を超えると、機器の一部取替が発生する可能性があります。契約前に耐用年数や取替費用を確認しておくと良いでしょう。また、いずれは撤去費用も発生するため、事業者へ事前に確認しておきましょう。

屋根貸しの仕組み

「屋根貸し」とは、住宅所有者の屋根などを太陽光発電の事業者に貸し出す仕組みになります。単純に事業者が発電できる場所を家主が提供してあげるイメージになります。

この場合においても、初期費用は事業者が負担するため、無料で太陽光発電を設置することができます。ただし、太陽光発電システムにより得られる収益は事業者のものになり、その収益から住宅所有者へ屋根の利用料が支払われます。

屋根貸しでは、住宅所有者が単に太陽光パネルの設置箇所を提供し、屋根の利用料を定期的に得るのみとなります。「PPA」のように契約期間終了後に設置された太陽光発電システムを無償譲渡される仕組みは無いのが一般的です。

それでは、「屋根貸し」を採用した際の住宅所有者のメリット・デメリットを確認しましょう。

【メリット】

・初期費用無しで太陽光発電システムを導入可能

・太陽光発電システムの保守費用も屋根貸し事業者負担

・定期的に屋根の利用料を得ることが出来る

【デメリット】

・長期契約になるため、今後より良い制度が出てきても変更不可

・再エネ賦課金を減らすことは出来ない

・屋根の利用料が少ない

・日中の停電時に太陽光発電が発電している電気を使用できるかは契約次第

・一般的に契約期間終了後でも太陽光発電システムは住宅所有者に無償譲渡されない

「屋根貸し」は利用料が定期的に得られることはメリットですが、その金額は一般住宅であれば、年間数千円~数万円程度(貸し出す面積によりますが…)と得られる利益が少ないことがデメリットになります。

また、撤去時に屋根の補修費用がかかるなどのデメリットが無いか事前に事業者へ確認しておくとよいでしょう。

リースの仕組み

「リース」とは、住宅所有者の屋根などに事業者が太陽光発電システムを無償設置し、住宅で発電された電力はこの住宅所有者のものになりますが、その対価として、リース料金を事業者へ支払う仕組みになります。

この場合においても、初期費用は事業者が負担するため、無料で太陽光発電を設置することができます。内容としては先に説明した「PPA」と似ていますが、異なる点がいくつかあります。

まず、住宅で発電された電力は住宅所有者が使用できる点は「PPA」と同じですが、支払う料金のシステムが異なります。「PPA」の場合は太陽光発電した電力の使用量に対して、料金を支払うのに対し、「リース」の場合は毎月、太陽光発電システムを導入した一定のリース料金を支払う必要があります。

また、「PPA」の場合、太陽光発電した電力は事業者のものでしたが、「リース」の場合は住宅使用者のものになります。よって、日中に余剰電力が生じれば、電力会社へ売電し、収入を得ることも可能となります。

それでは、「リース」を採用した際の住宅所有者のメリット・デメリットを確認しましょう。

【メリット】

・初期費用無しで太陽光発電システムを導入可能

・太陽光発電システムの保守費用もリース事業者負担

・再エネ賦課金が減るため、電気料金が安くなる

・停電時でも、日中は太陽光発電が発電している電気を使用可能

余剰電力が生じれば、電力会社へ売電することができる

契約期間終了後は太陽光発電システムをPPA事業者から無償譲渡される

【デメリット】

・長期契約になるため、今後より良い制度が出てきても変更不可

・リース料金によっては、上記メリットで得られる金額を超えてしまう場合がある

・太陽光発電設備を無償譲渡された後は保守・撤去費用は住宅所有者負担

「リース」の最大のデメリットは「契約期間中に毎月支払うリース料金 > 太陽光自家消費+余剰電力売電」となる可能性があることです。お得に太陽光発電を導入したつもりが逆に手出しする金額が増えるかもしれません。太陽光発電(10kW未満)はFIT期間の10年間は売電価格が固定されているため、ある程度の日照時間が確保されれば、リース料金を上回ると思いますが、上回り分の利益はそれほど多くならない可能性があります。

また、FIT期間の10年が終わる頃にはリース契約も終了するため、リース料金が不要となります。太陽光発電システムは住宅所有者へ無償譲渡され、自家消費および余剰電力の売電を継続できることはメリットになります。ただ、売電価格はFITが終了により、大きく下がるため、利益はそれほど多くならないと想定されます。

最後に考慮しておくべき事項として、太陽光発電システム無償譲渡後(設置から10年以降)の機器の保守費用と撤去費用になります。設置から10年を超えると、機器の一部取替が発生する可能性があります。契約前に耐用年数や取替費用を確認しておくと良いでしょう。また、いずれは撤去費用も発生するため、事業者へ事前に確認しておきましょう。

まとめ

太陽光発電を無料で設置できる仕組みやメリット・デメリットを解説しました。

住宅の屋根を貸すことで設置費用や保守費用が無料になるので、気軽に導入できるメリットがあります。

また、「PPA」、「リース」では電気代が安くなる、「屋根貸し」では定期収入があるなどの、コスト面で多くの魅力があります。

一方で、 「PPA」、「リース」では無償譲渡後は買取単価が下がる、譲渡後の太陽光発電システムの保守・撤去費用が生じるなどのデメリットもあります。

「屋根貸し」では、単に場所を提供するのみであり、定期収入はあるものの、その利益は小さいことがデメリットになります。

また、「PPA」、「リース」においては、 屋根の面積や形状および使用する電力量などによって、どれだけの恩恵(=電気料金の削減や余剰売電利益など)を得られるか事前にシミュレーションが必要になります。また、この恩恵にて、譲渡後の設備保守・撤去費用もカバーできるか確認が必要です。

具体的なシミュレーションは、各事業者にて実施して頂けるので、太陽光発電を初期費用ゼロで導入を検討している方は、一度、事業者へ相談してみてはいかがでしょうか。